愛犬や愛猫に触れていると、いつの間にか呼吸がゆっくりしていた——そんな経験はありませんか?
反対に、飼い主が緊張していると、犬や猫もどこか落ち着かないように見えることがあります。
今回は、母親と乳児を対象にした「呼吸と心拍変動」の研究を手がかりに、飼い主の深呼吸とやさしい触れ方が、動物との時間にどのような変化をもたらすのかを考えてみます。
抱っことゆっくりした呼吸を調べた研究
2019年に『Scientific Reports』で発表された研究では、母親が生後3〜8か月の乳児を抱き、普段どおりに呼吸する場合と、1分間に6回のペースでゆっくり呼吸する場合を比較しました。
研究者が調べたのは、母親と乳児の心拍変動(HRV)です。心拍変動とは、一拍ごとの間隔のゆらぎのこと。心と体の調整力を知る手がかりの一つとして用いられています。
母親がゆっくり呼吸すると母親の心拍変動が高まり、抱かれていた乳児の心拍変動にも変化が見られました。その現れ方は乳児の月齢によって異なり、6〜8か月の乳児では呼吸中に、3〜5か月の乳児では呼吸後に遅れて変化が見られたと報告されています。
つまり、抱いている人の呼吸や心拍の変化が、触れ合っている相手の体の反応と関係する可能性が示されたのです。
ただし、これは母親と乳児を対象にした小規模な研究です。犬や猫への同じ効果を証明した研究ではありません。また、「深呼吸をすれば必ず動物が落ち着く」と断定できるものでもありません。
飼い主の呼吸は犬や猫にも伝わる?
犬や猫は、飼い主の声の調子、動き、表情、体の力みなど、とても細かな変化を感じ取っています。
だからこそ、動物に触れる前に飼い主自身が呼吸を整えることには意味がある、と私は日々の関わりの中で感じています。
飼い主がゆっくり息を吐くと、肩や手の力が抜けます。触れ方も穏やかになり、急いで「何かをしてあげよう」とする気持ちも静まっていきます。
その落ち着いた状態は、言葉ではなく、手の温かさや動き、呼吸のリズムを通して、愛犬や愛猫に伝わっていくのかもしれません。
これはアニマルレイキで大切にしている、「まず自分が整い、動物のペースを尊重して寄り添う」という姿勢にもつながります。
愛犬・愛猫と一緒にできる呼吸の実践
特別な道具は必要ありません。次のように、無理のない範囲で試してみてください。
- 愛犬・愛猫が安心して過ごしている場所の近くに座ります。
- 触れることを嫌がらなければ、背中や肩にそっと手を添えます。触れなくてもかまいません。
- 鼻から楽に息を吸い、吸う息より少し長めに、口または鼻からゆっくり吐きます。
- 動物を変えようとせず、自分の肩や手の力が抜けていく感覚を味わいます。
- 動物が離れたら追いかけず、その選択を尊重します。
呼吸が苦しくなるほど長くしたり、回数にこだわったりする必要はありません。大切なのは、飼い主自身が心地よく落ち着けることです。
触れる前に、まず自分の呼吸へ
動物を安心させたいとき、私たちはつい「どう触れればいいのか」「何をしてあげればいいのか」と方法を探します。
けれど、その前にできることがあります。
それは、自分の呼吸に気づくこと。
愛犬や愛猫のそばで、まず一度、ゆっくり息を吐いてみてください。飼い主の落ち着きは、動物との間に安心できる空気をつくる、小さな一歩になるかもしれません。
あなたは今日、どんな呼吸で愛犬・愛猫に触れていますか?
参考文献
Suga A, Uraguchi M, Tange A, Ishikawa H, Ohira H. “Cardiac interaction between mother and infant: enhancement of heart rate variability.” Scientific Reports 9, 20019 (2019). 研究論文を読む


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